こんばんは
■3mmの誤差で噛み合なくなる!
材木に墨をつける
墨壷の話です。
これは何をする道具がわかるでしょうか?
材木に印をつけるための、道具で「
墨壷(すみつぼ)」と言います。
大工にとって欠かせない道具のひとつです。
手刻みといって
材木を組むときに、基準となる場所に印をつけるためのものです。
手刻みの作業については、また詳しく書きたいと思いますが、
今日は、この
墨壷のことをお話ししましょう。
紙に線を引く場合は、普通は定規を使いますよね。
材木に線を引くのに、この墨壷を使うのです。
主にセンターラインに墨を付けます。水平の目安にもしています。
墨のついた糸をパチンとはじくことで、一発で線を付けることができます。
この作業を、「墨を打つ」とか、「墨を付ける」と言うのです。
材木それぞれに形状がありますので、
曲がっているなら曲がっているなりに、
その形状に合わせて打てるように細工するわけです。
テクニックがあれば、曲線をつけることもできます。
4mにつき、1cmぐらいのゆるいカーブをつけることができます。
墨を打てるようになるまで、3~4年ぐらいかかります。
親方から手取り足取り教えてもらうのではなく、
兄弟子や
親方の姿を見て、横からその技を盗むんですね(笑)。
最初のうちは、もちろん現場でいきなりはできませんので、
親方のいないところで、練習を重ねます。
親方も、実はこっそりそういう様子を見ていて
「墨が打ちたいなら、木の隅壺買ってこい」と言われます。
今は、プラスチック製の墨壷もありますが、
墨壷は、その土地にある材木で作られてきたようです。
棟梁の使っているものは、欅(けやき)という木でできていて4~5万円する欅の墨壷です。
(少し縁起物の彫刻がしてあります)
棟梁は道具屋さんで買っていますが、
気に入っている墨壷があるので、ストックを置いています。
坪辰さんという職人さんのもので彫りが入っています。
糸はナイロン製のもので、0.38mmのものを使っています。
0.5mmでも太すぎます。
その糸で、1mmもずれないように墨を打つのです。
社寺建築でも、これができないと建てることができません。
材木を見ながら、
「この子は曲がっているから、こっちに。この子はこっちに持ってってあげよう」
と、番付けしていって、墨付けをしていきます。
昔に比べると材木の曲がりは少ないほうなんですが
曲がっている子も、まっすぐな子も、いろいろ使いますので
そのすべてをどこに入れてやればいいのか、
どの向きに入れてやればいいのか、
算段しながら組んでいきます。
それは、経験と知識によるものなんですね。
墨壷職人さんが減ってきてしまっていて
今は、確か全国に数名しかいらっしゃいません。
大工が減り、手刻みが減り、プラスチック製品が増え、道具職人さんが減っていかれる。
日本の財産だと思うんですけどね。
とても残念なことです。
※墨付けの様子、動画でも見られます。